奥秩父の醍醐味を満喫!瑞牆山東尾根踏査

こんにちは 原宿店バヤシです。
今日は先週21日の踏査の様子をレポします。
不肖バヤシが実行委員を務める「分水嶺トレイルレース」のコース調査で、今回は瑞牆山東尾根へ実地調査に行ってきました。
◇分水嶺トレイルレースとは?
「分水嶺トレイルレース」は奥多摩から清里まで日本の背骨である中央分水嶺を舞台に、4つの百名山(雲取・甲武信・金峰・瑞牆)を繋いで3日以内で踏破する、タフな山岳縦走レースです。
今年の開催日は7月18日~20日までの3日間。
鴨沢スタートで雲取山から清里へ至るAコースと、青梅スタートで清里へ向かうロングルートであるBコースの2コースと、それぞれソロとチームの2種目あります。
Bコースの距離は約120kmですが累積標高差は12.000mもあり、距離の割にはアップダウンが激しくかなりハードなコース設定になっています。
累積標高差は約8.000mのUTMF を抑え、隔年開催のTJAR(トランスジャパンアルプスレース )に次ぐ標高差を持つ過酷なレースです。
従来のトレイルラン大会と大きく違うのが、途中でのエイドやコース看板などの誘導無しという特色があります。特にコースの最後の区間、横尾山から飯盛山の間は登山道が整備されていない踏査区間となっており、読図能力が試されるルート設定になっています。
◇現在のコース設定と課題
青梅永山公園→青梅丘陵ハイキングコース→榎木峠→高水山→岩茸石山→黒山→棒ノ折山→蕎麦粒山→長沢背稜→酉谷山→雲取山→飛龍山→将監小屋→笠取山→水干→CP1雁坂峠→破風山→笹平避難小屋→甲武信ケ岳→国師ヶ岳→CP2大弛峠→金峰山→CP3富士見平→瑞牆山→不動沢→松平林道→信州峠→横尾山→飯盛山→獅子岩駐車場
現在のコースは上記のとおりですが、瑞牆山から信州峠の区間は瑞牆山から不動沢を通り松平林道を経て信州峠となっており、分水嶺から少し外れるのと、トレイルから一部車道と未舗装の林道がコースとなっているのが課題でした。そこでトレイル率を100%にするべく瑞牆山から東尾根を経由して小川山へ至り、山梨長野の県境尾根を信州峠へ抜けるルートを検討してきました。
◇50年前に作られた幻のルートを探れ!

瑞牆山東尾根を経由して大日岩から小川山への道へ通じるルートは、瑞牆山・金峰山への登山基地となっている富士見平小屋のご主人相川さんが50年前のなんと高校生の時(!)に切り開いたという伝説のルートです。
この約1.5kmほどのルートは瑞牆山から小川山への短縮路としてクライマー達に利用されていましたが、いつしか荒廃し知る人ぞ知る幻のルートになってしまいました。
今回このコースが果たしてレースに使えるのかどうかを確かめるべく、大会実行委員の3人で入山しました。

7/21(木)
瑞牆山荘からまず富士見平小屋を目指します。
一時期この小屋も荒廃していましたが今のご主人になってから見違えるように生まれ変わり、ご主人の相川さんの人柄に惹かれて登山客がひっきりなしに集う賑やかな山小屋になりました。
分水嶺トレイルでは富士見小屋は最後の第3関門になっており、瑞牆を前に英気を養う拠点として使わせていただいています。
今回のルートはこの相川さんが50年前に切り開いたルートで、小屋名物の美味しいコーヒーをいただきながらお話を伺いました。

全国の山小屋で初めてとなる地ビール「富士見平小屋ビール」の販売が今年から始まりました。このビールの売り上げは事故に備えてレスキュー資材の購入に充てられるそうです。
今年の5月は事故が多く対応に追われたそうですが、山小屋のスタッフがボランティアで救助に当たっておりその苦労は並大抵のものではありません。小屋を利用する際は感謝の気持ちを忘れずに!

瑞牆山の山頂付近はシャクナゲの群生が見られます。まだつぼみは小さいものばかりですが、これから6月初旬くらいが見ごろになります。
これから目指す東尾根もシャクナゲの群生が道を塞ぎ通過するのに苦労しました。

この日は明け方にかけて雪が降り南アルプスや八ヶ岳も真っ白になっていましたが、昼にはだいぶ溶けて無くなってしまいました。瑞牆山頂付近も木陰には所どころ雪が残っていました。

瑞牆山からは金峰山の眺望も素晴らしい!
分水嶺トレイルでは奥多摩から雲取山、甲武信岳、金峰山、瑞牆山と4つの百名山を一筆書きに縦走します。

荒々しく岩が露出した東尾根越しに小川山が見えます。東尾根のルートはこの岩場の巻きながら稜線をトレースしていきます。

山頂直下の鎖場に東尾根への分岐があります。一般の方が誤って入らないように入口は枝で塞いであります。
未整備のバリエーションルートですので経験者以外は立ち入らないようにしてください。

獣道がところどころありますが、ブッシュに阻まれ持参した鋸や鎌で道を切り開いていきます。
これから夏に入ると枝や葉がもっと張りだしてくるので藪漕ぎをもっと堪能できるかと思います。

枯葉や倒木、雪で足場が悪くルートも判然としないのでテープで目印をつけていきます。
もしもレースでこのルートを使用する場合の想定では夜間に通過することとなるので的確な読図能力と下見がカギとなります。

大雪の影響もあり倒木が多く、足元には背丈以上の穴がぽっかり開いているトラップが無数にあります。通過には細心の注意が必要です。

夜間は富士見平でも氷点下になるほど冷え込むので、2000m付近のこのあたりではつららが岩かぶら下がっていました。
ロープを出すほどではないですが険しい道が続きます。

上から見えた巨岩だけではなく、木々の合間にも巨岩が隠れておりルートを立ち阻みます。
途中ほとんど見通しが効かず、濃い樹林のせいでGPSの受信状況もちょこちょこロスするような状況でした。

苔むした奥秩父らしい景観が堪能できる面白いコースですが、夜間やガス時の通過は敬遠したいところです。

ブッシュを切り開き、目印をつけながら悪戦苦闘すること4時間。ようやく大日岩と小川山を結ぶ道に出会いました。この道も今は昭文社の登山地図では破線ルートになっていますが、先ほどまでのルートに比べるとしっかりとしています。

◇踏査を終えて
今回踏査したルートには適宜テープで目印をつけていますが、見通しが悪い樹林帯でブッシュも濃いのでまっすぐ進むのも困難な箇所が多々ありました。
足元もかなり悪いので日中はともかく、レースでは夜間や濃霧の時にも通過しなくてはならずかなり苦労することが予想されます。特にソロで参加している選手の場合、穴に落ちても誰にも見つけてもらえない可能性も高く、携帯電話はこの区間はほとんど圏外。第3関門を突破できれば100人もの選手が通過するコースに使うには安全管理と制限時間の面から残念ながら時期尚早との結論が出ました。
東尾根は今年中に環境省の調査が入るとのことで、コースの整備が進めば奥秩父の苔むした深い森林を堪能できる瑞牆山周回ルートとして魅力的なコースになりそうです。
踏査ルートの目印に最適!

今回使用したのがUST(アルティメイトサバイバルテクノロジー)のオレンジトレイルテープ。ルートの目印などに最適な鮮やかなオレンジ色のビニール製のテープです。
※美観の問題と、ゴミになってしまうのでむやみにマーキングしないように注意してください

1巻きで約46mあり、ハサミが無くても簡単に手でちぎることができるのでとても便利!
冬山のルートの確認や、藪こぎの際の目印に、いままで有りそうで無かったアイテムです。
読図の基本!地形図も取りそろえております!

分水嶺トレイルでは最後の横尾山から飯盛山までが踏査区間となっています。昭文社の登山地図では1/50000なので詳細な地形が分かりません。1/25000地形図「谷戸」「御所平」が必須アイテムになります。
この区間は藪が広がっていますが尾根線を外さないよう忠実にトレースし、豆腐岩、槍分岐、槍山頂の分岐点さえ間違わなければそんなに難しいルートでは有りません。しかし、スタートしてからの睡眠不足と疲労が積み重なり、正常な判断能力が失われているので毎年かなりの選手が道に迷い彷徨うポイントです。
ただ走力があるだけではすんなり完走できない分水嶺トレイルレースの醍醐味でもあります。
登山地図やコンパス、GPSなどのアイテムも充実!

分水嶺トレイルレースのコースや装備の質問はもちろん、山行の相談や地図探しまでお気軽にお声がけください!
分水嶺トレイルの名付け親原宿店☆バヤシでした