【行程概要】
9月18日(火)
渋谷(前夜発)~上高地~涸沢~(ルート偵察)~涸沢
9月19日(水)
涸沢~Ⅴ・Ⅵのコル~奥又白谷C沢~北条=新村ルート取付~Ⅳ峰~Ⅲ・Ⅳのコル~涸沢
9月20日(木)
涸沢~上高地~新宿
【山域、ルート概要】
Ⅳ峰正面壁は前穂高岳の東面に位置しており、前穂高岳北尾根のⅣ峰を奥又白谷側から詰め、登ります。
ベース候補地としては奥又白池か涸沢のどちらかが多いです。
今回は涸沢を選択しました。
下図赤線が今回のルートです。
北条=新村ルートはⅣ峰正面壁の中で比較的人気のあるルートではありますが、岩質は硬いとはいいがたく、ホールドやスタンスになりうる岩が浮いている箇所もありました。
下図右ラインが今回登った北条=新村ルートです。
グレードはRCCグレードで表記されています。
A1とは人口登攀(前進の手段として人工物を使用すること)のグレード表記です。
かっこ内はフリー(前進の手段として人工物を使用しないこと)で登った場合のグレードです。
【行程詳細】
9月18日(火)
渋谷から夜行バスで上高地に向かい、涸沢を目指します。
朝、日が出ない間は非常に寒くソフトシェルを着ての行動となりましたが、日が出た途端急に気温が上がり、半そでで十分なほどでした。
涸沢に着き、時間が余ったのでルートの取付きを確認しに偵察。
事前に自分の足で偵察を行っておくと、翌日暗い中でもスムーズに動けますし、暇つぶしにもなるのでおすすめです。
奥又白谷到着!
わかりにくいですが、右奥がⅣ峰正面壁です。
C沢はⅣ峰の左わきを通ってⅢ・Ⅳのコルに突き上げています。
ここまででも浮石がそこそこあり、気を張りながらの歩行で疲れたので、ここで偵察終了。
涸沢に帰還、就寝
9月19日(水)
暗い中身支度を整え出発
前日、日が落ちてからも晴れていたため非常に寒い。
身体を震わせながらⅤ・Ⅵのコルに到着。
ご来光
この日もやはり、日が出た途端気温が上昇していくのを体感しました。
前日に偵察した甲斐があり、快適に歩みを進めていきます。
北条=新村ルートの取付きが近づいてきました。
草
ルンゼ状部分はもちろん、フェース状からも草が生い茂ってますね^^
噂通りあまり硬い岩ではなさそうです。
不安要素はありますが、壁そのものは大きく高度感のある登攀が楽しめそうです。
核心ピッチ
少しわかりにくいですが、写真左の暗くなっているハング帯を越えていきます。
フリーグレードは5.10-と、決して高いグレードではありませんが、荷物を持った状態で身を投げ出しながら登らねばならず、緊張感のあるピッチでした。
とはいえ、5.10-であることに変わりはありません。
クライミングシューズのお力を借り、無事フリーで突破できました。
カムナッツ類が決まる箇所が多く、残置のハーケンも多いためグランドフォールの恐怖感はありませんでしたが、一個目のハングを越える際、浮いたホールドを発見。
それも非常に掴みやすい場所にあり、なかなかの恐怖感を味わえました。
核心ピッチを終え、壁の弱点に沿ってトラバースや左上を繰り返せば、緩傾斜帯に出て、ルートは終了です。
緩傾斜帯はロープを出すほどではありませんが、浮石を落とさぬよう慎重に登らねばならず、精神が削られていきます。
Ⅳ峰登頂!!
ようやく登頂
二人とも疲れた顔してますね。
バックはⅢ峰です。
北尾根は毎年多くの方が登っていますが、事故が多いのはこのⅢ峰の登りです。
滑落や上部からの落石など原因は様々ですが、防げた事故もあったはずです。
残置のハーケンは信用しない、落石が起きた場合のフォールラインを考えながら登る、など、基本的なことを守りながら登ることが大切なのかなと思います。
私もまだまだ甘々ですが…
下山
Ⅲ・Ⅳのコルからの下りも浮石の多いガレ場を下らねばならず、疲れた精神に追い打ちをかけてきます。
時間に余裕があるならⅣ峰登頂後は北尾根を詰め、前穂~吊尾根~奥穂~涸沢とルートを取った方が安全でライン取りも美しいので、そちらの方がよさそうです。
奥又白池をベースにする場合は北尾根上をⅤ・Ⅵのコルまで戻り奥又白谷を越えて戻るルートと、前穂高岳山頂から明神岳方面に下りA沢を下降後奥又尾根に上がって池まで戻るルートの2パターンです。
どちらにせよ慎重な下降を要求されそうです。
今回使用した登攀具の一部です
ロープはルート取りがジグザグになり流れが悪くなってしまう状況や、アクシデントがあり、同ルート下降を余儀なくされた状況を想定してダブルロープを選択しました。
写真には1本しか映ってませんが二本あります。
ハーケン3枚、ハンマー、捨て縄、ナイフも同ルート下降用です。
また、今回は荷揚げ用としてタイブロックとマイクロトラクションも持っていきました。
お世話にならずに済んでよかったです。
ナッツは、もっと小さいサイズがあれば…と思う箇所が多く、装備面で今回一番の反省かもです。
今回持って行ったのはブラックダイアモンドのストッパーですが、#4以下があれば大活躍間違いなしです。
9月20日(木)
上高地に降りるだけなので、昼前まで惰眠を貪ろうかとも思いましたが、ちゃんと朝起きて下山。
天は我々の謹直な生活をしっかりと見ていたようで、上高地に到着した途端雨。
早めに出発しておいて正解でした。
この時期の雨は当たっていなくとも寒く、上高地ではフリースを羽織っていました。
余談ですが、今回のルートの初登は戦前です。
すべての装備が今より重く、扱いづらかったことでしょう。
当然ですがルートの情報も全くありません。
そんな中、岩の弱点を突きながらルートを拓いた先人にはただただ脱帽です。
私はまだまだ雑魚ということですね。
精進あるのみです。
【新宿西口店】甘利祐貴 西田由宇