2019年2月18日(月)
「大菩薩嶺(2,057m)」
に日帰り冬山登山をしてきましたのでレポート致します。
山梨県甲州市と北都留郡丹波山村にまたぐ大菩薩嶺は、日本百名山(&山梨百名山)の一つに数えられ、アクセスの良さや初心者向けの難易度、大菩薩峠から伸びる稜線の眺望などが相まって、通年通して多くの方が登る人気の山です。
今回は、2月と言うことで気になる雪の状況を確認しつつ、私も大好きな大菩薩峠の稜線を楽しむため登ってきました。
「(前置きはいいので)さっさと稜線の景色を見たい!」という方は
◆今回の登山ルート◆
丸川分岐駐車場START ~ 上日川峠 ~ 福ちゃん荘 ~ 大菩薩峠(1897m) ~ 雷岩 ~ 大菩薩嶺(2070m) ~ 丸川峠 ~ 丸川分岐駐車場GOAL
■距離:12.9km / 累積標高(登り):1,112m /標準CT6時間20分(夏期)
※無料GPSアプリ「YAMAP」で実際に取得したGPSデータを利用しています。
冬期は上日川峠へ車でのアクセス不可(県道201号線車両通行止め)ですので、バス利用なら麓の裂石、車なら丸川分岐駐車場からのスタートとなります。
今回は上日川峠経由で①まず大菩薩峠へ向かい、②稜線を歩いて大菩薩嶺へ登頂。ピストンせずに③丸川峠を経由して駐車場へ戻るという周回コースを選びました。
他には、大菩薩嶺から丸川峠へ向かわず、上日川峠へ戻る(唐松尾根を利用)コースもポピュラーです。
大菩薩嶺⇔丸川峠は北側の樹林帯で積雪量が比較的多いところなので、少しでも状態のいいところを歩きたいのであればコチラの方がいいでしょう。
何れにせよ、夏期の上日川峠スタートよりもコースタイムが長くなるということを念頭に置いて登山計画を立てるようにして下さい。
(ガイドブックでも小屋泊での山行が紹介されていたりします。)
駐車場は「丸川分岐駐車場」を利用します。
車なら中央自動車道「勝沼IC」で降りて30分もあれば到着します。最後の県道201号線(塩山停車場大菩薩嶺線)は車1台分の幅になるので、すれ違い等には注意が必要です。
※↑下山後に撮影。
15台程度駐車可能ですが、トイレ等はありませんので事前に済ませておきましょう。
ちなみに、今回私の歩いたルートの逆回り(先に丸川峠へ)の方は、この駐車場の奥を進んでいくと丸川峠に向かえます。
上述した通り、県道201号線は丸川分岐駐車場のところから上日川峠まで冬期車両通行止めとなっているため↓このようなゲートが設けてあります。
※↑下山後に撮影。
ゲート横から登山開始です。
いきなり暗い写真に変わりましたが、これは私が早朝スタートしたからです。
県道201号線を少し歩くとカーブの先に登山道がありますので、そちらに進みます。
ちなみに、ここの登山道をスルーして県道201号線をそのまま歩いてしまっても再び合流するのでご安心を。
朝の気温はマイナス3~4℃。風はないですが耳や鼻も何かで防寒していないと寒いくらいでした。
登山道に雪はありません。
(写真右)少し歩くと再び県道201号線に出ます。
県道201号線をちょっと歩くと、またカーブの先で今度は橋があってその先に千石茶屋が見えてきますので、橋を渡ります。
(写真右)リスの看板が目印です。
橋を渡った先にある建物が千石茶屋です。ちなみに冬期は営業していません。
千石茶屋横の林道を進んでいきますと、上日川峠への道標がありますので、ここから登山道へと入っていきます。
上日川峠までの登山道は雪はほとんど見当たらず、地面はやや硬かったものの凍結している感じでも無かったので歩きやすい状態でした。
ただし落ち葉が多いので、滑らないようそこだけは注意して歩きました。
ちなみに本日はソールの硬いマウンテンブーツ(夏靴)を履いて、軽アイゼン(6本爪アイゼン)とチェーンアイゼン(後述)を持参しています。
少しづつ高度を上げていくと、再び県道201号線に出ます。
(写真右)右折して車道に出ます。下山で利用する場合はこの道標を見逃さないようにしましょう。
車道をちょっとだけ歩くと直ぐに上日川峠への道標がありますので、それに従いまた登山道に入ります。
(写真右)カーブを越えた先に道標とロープが張られた登山道がありますので、分りやすいです。
標高が上がるにつれて地面や落ち葉に霜が降りていることが増えてきましたが、歩行にそこまで影響はありません。
今のところ順調そのもの。
「上日川峠(標高1,580m)」に到着しました。気温はマイナス4℃。
夏期はここまで車で上がってこれますが、今の時期は通行止めなので車もなく静かです。
(写真右)近くには上日川峠公衆トイレもあって、冬期も中央の1ヶ所だけは利用可能です。
ここからは、福ちゃん荘(唐松尾根分岐点)を目指します。
ロッヂ長兵衛の右横の舗装路を進み、直ぐ先きの左手から登山道に入ります。
ロッヂ長兵衛は、冬期も土日祝は営業しているようです(要予約。平日は要確認)
福ちゃん荘までは、林の中のハイキングコースと言った感じで歩きやすくいい雰囲気のところです。
ここら辺で、ようやく登山道に雪が現れ始めました。
とは言え、ごく一部に残っているだけで、ほとんどは溶けていました。
20分程度で福ちゃん荘に到着です。ここは冬期は予約日のみ営業とのこと。
(写真右)福ちゃん荘の横の奥が「唐松尾根分岐点」です。
ここを起点として、福ちゃん荘⇔大菩薩峠⇔雷岩(大菩薩嶺)⇔唐松尾根⇔福ちゃん荘と周回することが可能でして、夏期登山では最もお手軽なコースとなります。
今回は唐松尾根は使いませんので、右方向の大菩薩峠方面へ向かいます。
道標にも書いてありますが、こういう分岐では一旦立ち止まって地図の再確認を習慣づけましょう。
大菩薩峠までは、林道や砂利道を歩いていきます。
分岐の道標から直ぐのところの、唐松尾根分岐公衆トイレ(写真左の建物)も利用可能です。
(写真右)林道を進み、勝縁荘という山小屋付近まできますと雪が増えてきました!
勝縁荘の近くの沢は、凍結していました。気温はマイナス5℃。
これはこれで趣があってイイですね。
ここから先は、陽当たりが悪い所を中心に雪道がチラホラと現れ始めました。
ただ、部分的にすぎないですし、傾斜も緩やかなのでアイゼンを付けるまでは至らずと言った感じです。
雪がしっかりあるところでしたら踏みしめて歩けますので、問題なくツボ足で歩けます。
ソールの柔らかいハイキングシューズだと滑りやすいのでご注意を。
何度か方角を変えながら樹林帯を登っていくと、介山荘(写真左)が見えてきます。
ここまで来たら、大菩薩峠まであと少しです!
(写真右)介山荘横の公衆トイレは冬期は使用できません。
介山荘も要予約ですが冬期も営業しており、位置的にも丁度いいので山小屋泊で計画される際に利用したいところですね。
「大菩薩峠(1,897m)」に到着!視界が一気に広がります!
ここまで鬱蒼とした樹林帯を歩いてきて、建物の狭い間を抜けたと思ったら
一気にこの開放感!ですからね。
初めて来たときに強烈なインパクトを受けたのを今でも覚えています。
本日は稜線は風が強いものの、これ以上ないくらいの冬晴れでございます!
左手(西側)に目をやると、南アルプスの山々がズラリ!
更に南西には富士山!
実際は登っている最中からチラホラ見えていたのですが、木立が邪魔していたので全容を見れるのは稜線上からです。
ここからは、この山行のハイライトと言える開放感抜群の稜線歩きです!
いやー、何度来てもこの稜線は素晴らしいですね!
稜線上はマイナス4℃前後で、風が強く吹いており非常に寒かったです。
樹林帯よりも一段階寒くなる感じなので、顔や手の防寒対策もないと厳しいでしょう。
雪に関しては、日陰にごく一部あるだけで歩行に影響はありませんでした。
↑親不知ノ頭から先へ伸びる稜線や、賽ノ河原・妙見ノ頭を撮影。
個人的に好きな構図です。
ちょっとした岩場もありますが、基本的には歩きやすい道が続きます。
夏場は虫が多くて辟易することが多いのですが、この時期は(寒くなければ)快適そのもの!
↑標高2000m地点の標柱。
ロングスパッツもしていますが、地面の泥濘などもほとんどありませんでした。
この稜線随一のビューポイントである「雷岩」に到着しました。
ここは岩塊が盛り上がっており、その上から周囲を一望できるのです。
↓富士山と上日川ダム。
清々しい青空!
富士山は色んな所からいろんな角度で見られる訳ですが、
とりわけ私は、山梨県側の山の上から見る富士山がイチオシです。
パワーを貰える感じ。雄々しい印象を与えてくれる富士山です。
南アルプスの稜線も本日はバッチリ見えています!
稜線歩いている間、左手はずっとこんな感じですからね。凄いですよね。
↓南アルプス北部の山々。
右から甲斐駒ヶ岳・仙丈ヶ岳・北岳・間ノ岳・農鳥岳など。
↓こちらは南アルプス南部の山々。
塩見岳・荒川岳・赤石岳・聖岳などなど。
更には北西に目をやると、遠くに乗鞍岳の姿も!
本日の眺望は、間違いなく歴代No.1と言える素晴らしいものでした!
そして、雷岩を降りた先が3方に分岐するポイントとなっています。
大菩薩嶺へはこのまま北へ進みます。
(写真右)分岐にある道標。唐松尾根に行くなら「上日川峠」とかかれた方向です。
(唐松尾根へはここから左に登山道が続いており、下りきると福ちゃん荘のある唐松尾根分岐に辿り着けます)
分岐を越えた先からは積雪量が一気に増え、登山道の状況が一変します。
ようやく雪山っぽくなりましたね。
深雪という程ではないですし、雷岩⇔大菩薩嶺は片道10分かからない程度で登りも緩やかなので、ツボ足でそのまま歩きました。
そして
日本百名山「大菩薩嶺(2,057)」に登頂!
大菩薩嶺の山頂は樹林帯の中なので、展望はありません。
ここからは、丸川峠を経由して下山をするので北に伸びる道へ進みます。
上日川峠経由でピストンで戻る方は、先ほどの雷岩の分岐まで戻ります。
大菩薩嶺⇔丸川峠までは、鬱蒼とした北斜面の樹林帯が主体となり、このルートでは最も雪がある(可能性が高い)区間となります。
やはり今年は積雪量が少ないためか、路面凍結していたり、中途半端に木の根っこや岩肌が露出していたりと嫌らしい状況でした。
今回は軽アイゼン(6本爪アイゼン)と、チェーンアイゼンを持ってきていた私ですが、
ここで、チェーンアイゼン[ベリガ アイストラック/¥4,500]を装着することにしました。
つま先引っ掛けて、ゴムバンドをかかとにはめるだけで装着可能な滑り止め※です。
※チェーンアイゼンについてですが、
〇着脱が容易
〇(軽アイゼンより)夏道や平坦部が歩きやすい
△ハイキングシューズでも装着可(足への衝撃を加味するとソールは硬い方がいい)
× 急斜面では力不足(軽アイゼンより滑りやすい)
× しっかり積もった雪道も同様
というような性質を持った滑り止めです。
得意なのは薄っすら積もったり、アイスバーンになった平坦部(林道)やなだらかな斜面の凍結路であり、
チェーンアイゼン ≠ 軽アイゼンですので、チェーンアイゼンがあればどんな状況にも対応できるわけではありません。
登山道でチェーンアイゼンを使う場合は、状況を見極めて安全に使って下さい。
今回で言えば、丸川峠手前までの下りは比較的なだらかな道が多いことや、積雪量の少なさから地面が露出しているところも割と多かったため、歩きやすさや着脱の容易さを重視してチェーンアイゼンを選択したという形になります。
(写真左)所々陽当たりのいい場所は、雪が解けていて夏道となっていました。
チェーンアイゼンは刃が短くてソール全体に行き渡っているため、夏道でもバランスが取りやすく歩きやすいのです。
(写真右)薄っすらと積もり路面凍結している平坦部。チェーンアイゼンが活躍する状況と言えます。
暫く進むと、山の谷間に開けた丸川峠に出ます。
(写真右)ここでは再び視界が広がります。
丸川峠には、丸川荘が建っています。
ここも冬期は土日祝の営業(要確認)です。
(写真右)丸川荘横の「大菩薩連嶺 丸川峠」と書かれた看板のところからは・・・・・・
山の谷間から、富士山が見渡せました!
冬の富士山は、やっぱりカッコイイ!
丸川峠は3方に分岐しており、丸川分岐駐車場へは「裂石」と書かれた方向へ進みます。
道を間違えないよう、地図で再確認して下さい。
丸川峠を越えると、今まであった雪がウソのように無くなりました。
チェーンスパイクは今回は丸川峠でお役御免です。
ひたすら樹林帯の中を下っていきますが急坂や大きな段差も結構あります。地面がサラサラに乾いていて(写真右)滑りやすかったりするので、意外と疲れる区間です。
気温も2℃程度まで上昇して陽当たりもいいので、寒さに慣れた体には快適に感じる陽気となりました。
(写真右)ここの下りは長く感じますが、沢音が聞こえてきて「裂石は→」の道標を見つけたら、ようやく右に折れて終わりとなります。
みそぎ沢沿いの林道に出ますので、あとはゆるやかに下っていくだけです。
沢沿いなので、先ほどまでの陽当たりのいいところよりも幾分寒いくらいです。
真夏に登った時は、ここの涼しさに癒された記憶があります。
そして「丸川分岐駐車場」に戻ってきて、今回の山行は終了です!
平日のこの時期でも、登りに来ている車がそこそこ止まっていました。
冬山登山と言うには積雪量が少なかったのですが、これ以上ないくらい晴れ渡っていて、大菩薩嶺からの絶景の稜線歩きを堪能できたので大満足の山行となりました!
冒頭でも書きましたが、今回のように丸川峠経由で周回(逆回りも可)してもいいですし、唐松尾根を利用して上日川峠経由のピストンでもいいです。
ゆったり登るなら、介山荘などで宿泊(要確認)して小屋泊まり山行してもいいなど、色んな楽しみ方ができる山です。
難易度も、装備と雪次第ですが初心者の方でも十分登れる冬山と言えるでしょう。
そんな大菩薩嶺ですが、その年により積雪量の変動が大きい山域ため、登山計画と事前の情報収集が非常に重要となってきます。
日帰りで計画される際は、ご自身の体力・装備・経験をしっかり踏まえたうえで、早出を心掛けるようにするとよいでしょう。
装備に関しても、今回はチェーンアイゼンを下りで利用しましたが、積雪量の多い年や降雪直後などは軽アイゼン(6本爪)の方が安定することでしょう。
何れにせよ、何かしら雪に対する足元の対策がないと、登りはともかく下りでのスリップのリスクがありますので、登山靴もなるべくアイゼン対応のソールが硬いタイプの方が安心して登ることができます。
ピッケルは使う機会はないですが、バランスを取るためにダブルストックは欲しい所です。
その他、寒さ対策にサーモスに暖かい飲み物を入れていくのもおススメ。
ウェアに関しても、大菩薩峠の稜線は、2000m前後の標高の中で風が強くて寒いので、防寒対策は万全にして登ってください。
防風・防寒手袋やニット帽、耳や鼻を覆えるバラクラバやネックウォーマ―などがないと、折角の素晴らしい稜線も楽しめませんよ!
装備に関すること、山に関すること、何でもお気軽に当店スタッフにご相談ください!
冬の大菩薩嶺(大菩薩峠)おススメです!
大宮店 會田