【カスタムブログVol.10】Special Talk──須川・山野井・齋藤 ニューモデルスキー選びの意外なポイント

2021-08-10

Special Talk──須川尚樹・山野井全・齋藤人之

ニューモデルスキー選びの
意外なポイント。
2nd & 3rdモデルに要注目!

 今年3月に行なわれた第58回全日本スキー技術選手権大会(以下、技術選)で躍動感あふれる滑りを見せ、初めてのトップ10入りを果たした山野井全(総合6位)と須川尚樹(総合9位)。一躍トップスキーヤーの仲間入りをした二人は、ISHII SKI ACADEMY HOKKAIDO校長を務め、今もなお現役選手として技術選に出場し続ける斉藤人之のもとで技術を磨き、総合的に進化を求めるチーム「TEAM14」の教え子たちでもあります。
 うまくなるためには、どうすればいいのか? この命題に答えるために普段から技術論を交わし、用具の性能を最大限に引き出すための身体の使い方を研究してきている3人に、今季のデモモデルの特徴を語り合ってもらいました。

 

齋藤 人之

【斉藤】 春からシーズン終わりにかけて、いろいろなメーカーのスキーをテストする機会があって、それぞれに2021/22シーズンモデルの特徴を感じていると思いますが、実際にどんな印象を持ちましたか?

【須川】 ここ2〜3年の印象ですけれど、しなやかなスキーが多くなっているということはすごく感じています。それまでは張り感(フレックス)の強いスキーが多かったのですが、各社、たわみを引き出すためにものすごく開発力を注ぎ込んだ結果、しなやかでたわみやすいスキーが増えてきたと感じます。

【山野井】 そのたわみも、ターン全体をとおしてたわみっぱなしなのではなく、スキーがフォールライン方向に向く瞬間に、短い時間でたわみを作っていけるモデルが増えていると思います。

須川 尚樹

【斉藤】 カービングスキーが出始めた頃は、角づけを深めれば深めるほど深まわりができて、どれだけ切れるんだろうとか、どれだけ切り上がるんだろうということをスキーヤーも求めていたけれど、それが変わってきた。技術的にも、雪面に強くスキーを押しつけてターンする滑りから、斜面を落ちていきながらスキーのたわみを作り、そのたわみを生かしてカービングするという滑りに変わってきた(*1)。技術選でみんなが見せる滑りも、そういう滑りに変わってきていると思うんだけれど、実際の感覚として、どうですか?

【山野井】 スキーのトップに雪がぶつかって雪面抵抗を受けることで、フォールライン付近でたわみが瞬間的に出る。それをどれだけ生かしてカービングできるかというところが僕自身がめざしている技術でもあるし、それができるかどうかがスキーの評価につながっています。

【須川】 スキーの性能の変化に合わせて滑り手の技術も変わってきて、滑走中、トップで雪面抵抗を受けた結果生まれるたわみでカーブを描くという滑りになってきています。技術選の選手の滑りを見ても、前よりは身体が傾いている時間は少なくなってきていると思います。前は長い体軸を深く傾けてターンしていましたけれど、今は体軸が起きている時間が比較的長くて、瞬間的にカーブするときにごく短い時間傾きが深くなるというイメージです。

【山野井】 外脚に対する頭の位置は限りなくレースの滑りに近くなっているし、地面との距離も、いつでもスキーを押さえられる高さを保つというところなどは、技術選の選手全体の傾向として明らかに変わってきているし、それが今の道具の性能とマッチする滑り方だと思います。

【須川】 技術選の選手の滑りはタイトなターンに変わってきています。強くスキーを雪面に押しつけて曲がっていくのではなく、斜面上を落ちていきながらたわみを作って、そのたわみを生かして曲がっていくスタイル。それを自分の力に頼って行うのではなく、用具の性能を十分に生かして、雪面から受ける抵抗が大きくなるタイミングで、良い位置に身体を運んで、正確に身体を使って受け止めてスキーのたわみや走りにつなげていく。トップ選手は、そんな滑りをしていると思うし、自分としてもそこを目指してやっていきたいと思っています。

山野井 全

【斉藤】 一般スキーヤーは、みんなほどスピードはないけれど、それでも落ちながらたわみを作って、そのたわみを生かしてターンしていけるモデルは増えていると思う。例えば滑走中にテンポアップするにしても、自分の力を使ってテンポアップするのではなく、たわんだスキーの戻りを利用してテンポアップしていける。そんなスキーに変わってきていると思うんだけれど、どう?

【山野井】 以前のモデルと比べると浮力のあるモデルが増えてきて、ターンの始まりから終わりまで、ずっと長い時間グリップしているのではなく、短い時間でグリップしたあとは、スキーの性能でターンを終わらせてくれたり、テンポを上げられモデルが多くなっていると思います。そういう意味でものすごくオートマチックなモデルが増えています。

【斉藤】 全体的にターン後半に強い抵抗を受けすぎない構造、サイドカーブへの改良が進んできているよね。ターン後半に強い抵抗を受け止めると、身体が硬直して脚が突っ張って、結果、次のターンに入りづらくなってしまう。そこの部分を道具が助けてくれて、必要以上の力を使わなくても切れてくれたり、スキーの返りを生かしてターンを連続しやすい作りになってきていると思います。

【須川】 全体的に上位機種でも乗りやすさがあって、対象となる滑り手の幅は広がっているんじゃないかと思います。あまりグリップ力が強すぎると難しいスキーになってしまうけれど、今は浮力が出るスキーが主流だから意外と乗り手の幅は広がっていると思います。

【斉藤】 トップモデルの噛み具合とか走りはものすごく良いけれど、どんな雪質、どんな斜度でも同じことができるのかというと難しくなってしまう部分がある。スキー選びをするときに意識してもらいたいのは、セカンドモデルやサードモデルの存在です。これらは十分な切れや走りを備えたうえで、ターンサイズにも、雪質にも対応幅が広く、すごくマルチに使えるモデルになります。

【須川】 シーズンをとおして、さまざまな質の雪や条件の斜面、そして多くのターンサイズで滑ることを考えると、セカンドモデル、サードモデルはおすすめできる選択です。どうしてもトップモデルに目が向いてしまいがちですが、各ブランドのセカンド&サードモデルがどんな特徴を持ったモデルなのかを石井スポーツのスタッフに確かめてマテリアル選びに役立ててください。

(脚注)
*1:スキーのたわみというと、一般的にはスキーに真上から力を与えて(重さを乗せて)スキーをたわませることをイメージしますが、TEAM14のメンバーは、滑走中、前に滑っていくスキーのトップ部に雪があたり、その結果生まれる雪面抵抗によってスキーがたわむことを技術的に重視しています。

斉藤人之
Hitoshi SAITO

石井スポーツ宮の沢店所属、ISHII SKI ACADEMY HOKKAIDO 校長。北海道を中心に選手の育成、クラブのコーチングにあたっている

須川尚樹
Naoki SUGAWA

石井スポーツ宮の沢店所属。ジュニア期から技術選をめざし、そのためにアルペン競技も経験。その経験が今年結実し、総合9位へ躍進した。全日本ナショナルデモンストレーター

山野井全
Zen YAMANOI

全国学生岩岳スキー大会で活躍したのち全日本技術選へ。今年の大会では予選終了時にトップに立つなど抜群の活躍を見せ総合6位。今もっとも注目すべき若手スキーヤー

斉藤人之校長の+ 1 point

真のオールラウンダー。
万能なセカンドモデル、
サードモデルの魅力

須川尚樹×山野井全×斉藤人之、TEAM 14 の3 人の対談のまとめとして出てきた「セカンドモデル&サードモデルの魅力」を、ISHI SKI ACADEMY HOKKAIDO の斉藤校長にまとめてもらいました。

入念にチェックする齋藤

モデルのランクと目的(価格帯)

レーシング・トップモデル(15 万~ 20 万円)

 ・アスリートが戦うために
 ・高速時の性能、操作性
 ・ターンの精度

オールラウンド・トップモデル(13 万~ 16 万円)

 ・スピードとパフォーマンスの向上
 ・高速域の操作性の高さ、コントロール性能

セカンドモデル (11 万~ 14 万円)

 ・快適性とレベルの高いパフォーマンス
 ・乗りやすさ

サードモデル(8 万~ 11 万円)

 ・快適性と軽さ、剛性(安定感)
 ・乗り心地のよさ

セカンド&サードモデルの魅力と特徴

 ・中級レベルから上級レベルまでが乗れる
 ・誰でも乗りやすい
 ・確実にターンができる
 ・扱いやすく楽しく滑れる
 ・やさしく操作できる
 ・気軽にスピード上げて楽しめる
 ・理想のターンが低速、中速、高速と幅広い範囲で確率高くできる

セカンド&サードモデルならではのアシスト要素

 ※ポジションに悩んでいる方におすすめ
 ※反発のコントロールが難しいと感じる方へ
 ※基本的なことができていなくても、滑走していくうちに乗るスポットが早く見つかる
 ※細かいテクニックを使うことなくターンのレベルを上げていける
 ※ミスターンの低減(極端に暴走したり、滑走スピードを大きく落とすことがない)

まとめ

 スキーヤーのスピードレンジによって使う技術、バランスが変わることが前提になります。セカンド&サードモデルは、快適なターンを感じるゆとりをくれるモデルです。確実なターンへと導くための、スキーのたわみを引き出す方法も簡単で、広いスィートスポートにポジショニングするだけでOK で、激しく動かないほうがうまくいきます。その結果、リラックスしたポジションで滑ることができます。セカンド&サードモデルは、そんなバランスを持つモデルです。よく行くスキー場やコース、雪質の傾向、滑走日数に合わせて選びましょう。くわしくは石井スポーツのスタッフにご相談ください。

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