登山靴を選びにご来店される初心者のお客様から「初心者ですがどの山がおすすめですか?」とご質問いただくことがよくあります。そこでおすすめできる山、百名山の一つ山梨県の「大菩薩嶺(だいぼさつれい)」を登ってきました。
標高は2057mですが、登り初めの登山口の上日川峠は1600mとスタート地点が高く、車やバスでアクセスできます。アプローチの手軽さと富士山の眺望を堪能できるこの山は、日帰りハイクを目的としたベテランから登山デビューを飾るビギナーまで幅広く楽しめます。
8月1日早朝、上日川峠の駐車場にはすでに多くの車が停まっており、出発するハイカーが沢山いました。
午前7時15分登山開始。整備された樹林帯を歩きほどなく福ちゃん荘へ到着し、コースは唐松尾根へと向かいます。あたりを覆うブナやカラマツの木々が日光を遮り、心地よい登山となりました。登ることおよそ1時間、木々の隙間から青空に聳え立つ富士山が見え出すと思わず足取りも軽くなりました。

雷岩を越えて8時50分、大菩薩嶺の山頂に到達。山頂は樹林に囲まれているため戻って展望が開けた雷岩近くで昼休憩。ここは富士山やアルプス、八ヶ岳と眼下に広がる山梨の山や街並みなどの眺望がとても良く食事をする方が多いです。斜面に目をやると、草むらの中で鹿が何やらずっともぐもぐと食事を楽しんでました。その付近には綺麗な橙色の花が咲いており、それを食べているのだろうかと気になって調べてみると、どうやらその可憐な花「コウリンカ」と言う花には毒があるらしく、鹿はそれを避けて若葉や山野草を食べていました。鹿越しの富士山をみながら、こちらも昼ご飯を食べるといった何とも風情のある一幕に出会えるのも山歩きの醍醐味です。


9時50分再出発。ここから大菩薩峠へと続く緑の稜線歩きこそ、本ルート最大のハイライト。圧倒的な開放感と奥に鎮座する富士山の絶景こそが見どころになります。と言うことで、富士山が上昇気流で雲に隠れてしまう前の午前10時くらいまでに稜線へ立つタイムスケジュールを組むのがオススメです。


ただこの稜線は遮るものがなく日差しが強いため、今回「BUFF」という顔を覆う日除けマスクを準備しました。下山後の肌へのダメージも劇的に軽減されましたのでおすすめの一品です。

10時40分に賽の河原の避難小屋を通過し、10時55分大菩薩峠へ到達。ここはかつて江戸中期などには青梅街道の通過点としての難所でもあり、武蔵と甲斐を結ぶ交易の要衝として多くの旅人が行き交った場所ですが、今もなお多くのハイカーで賑わっていました。


ここから下山し始めて11時40分に福ちゃん荘でサイダーを購入し喉を潤し、12時00分にスタート地点の上日川峠へ帰着。コースタイムは休憩を含めて約5時間。見晴らしのいい絶景を楽しめる大菩薩嶺は、新緑も紅葉の季節もオススメの一座です。
ところで、大菩薩嶺の山頂から眼下に広がる盆地の街並みをみていると「昔この地を治めた古人や住んでた人は、この地をどのように眺めたのだろうか」とふと思いを馳せました。下山後、以前より気になっていた甲斐国一宮浅間神社や国府跡地、聖武天皇期に建立された国分寺の跡地を訪ねてみました。そこは四方が山に囲まれており、北西方向には先ほどまでいた大菩薩嶺が、南には富士山を仰ぐことができ、まさにこの場所こそ古代の甲斐国の中心地だったのであろうと実感しました。

今は何もないくらい草叢が広がっているだけなのだが、この場に佇むと千年前の景色を、確かに歴史が動いていた息吹を感じることができました。山頂から感じたあの雄大な感動は、かつてここで生き、未来を見据えていた人々が見た景色そのものだったのかもしれない。
一歩一歩、山を登ってその先で出会った景色には、単なる自然の美しさだけでなく、時空を超えていにしえの記憶と繋がるような旅となりました。




